小型船舶登録書類の作成は海事代理士の業務なのか?

近年、海事代理士と行政書士との職域の争いとして、プレジャーボートをはじめとする小型船舶の登録手続きはどちらの業務なのかという問題があるようです。

結論から言うと、行政書士の業務であり海事代理士の業務ではないということで結論が出ています(最後に国交省・総務省の照会回答を掲載しています。)。

 

ネットなどでは、小型船舶登録法が制定された当時の国会答弁(参議院・国土交通委員会第20号 平成13年6月22日)を根拠に海事代理士もこの手続きを業務として行えるとする意見があるようです。

しかし、残念ながらこの見解は誤っているということになります。

この国会答弁を確認してみましょう。


「○政府参考人(谷野龍一郎君) 御説明申し上げます。
現在、船舶法でやっております五トン以上二十トンまでの都道府県でやっております登録制度につきましては、先生御指摘のとおり、海事代理士がその手続を行う、こういうことになっております。これは御承知かと思いますが、海事代理士法の中でいわゆる国とか地方公共団体に限ってそういうことになっておる、こう書いてございまして、小型船舶検査機構にゆだねた場合に制度的には少し無理があるかな、こういうことでございます。」


このように国会答弁で政府参考委員は、小型船登録法が成立しその登録手続きを小型船舶検査機構に委ねた場合には、制度的に海事代理士が業務とするのは無理があると明確に述べています。

もっとも、質問者と政府委員との間には、このようなやりとりもあります。


「○寺崎昭久君 再確認しますが、海事代理士を含めてだれでも申請できるようにするということ、それからそのことについては通達等で明らかにされるということでよろしいか。」

「○政府参考人(谷野龍一郎君) おっしゃるとおりでございます。」


これだけをみると、海事代理士も小型船舶の登録手続きを業務とすることができるかのようにみえますが、それも誤りです。

この前の政府委員答弁(048)では、現時点でユーザー自身だけでなくボート販売店などによる第三者代行も実態として行われているため、海事代理士による場合も窓口規制を行わずこれらと同じく扱いたいという趣旨のことを述べていますから、これを前提にしたやりとりにすぎません。

つまり、海事代理士の業務ではないものの、小型船舶検査機構としては海事代理士による申請があった場合でも却下や申請の拒否をしないというだけにすぎません。それによって行政書士法に違反して処罰の対象となるか否かは別論という趣旨のようです。

なお、この答弁の約4年後にあたる平成17年6月3日に、国交省と総務省が出した この論点に関する照会回答が出ていますので、以下に掲げておきます。


(国交省回答の要旨)

「小型船舶登録法に基づく登録手続きは海事代理士の独占業務とはしていない。海事代理士が小型船舶検査機構に関する書類を、報酬を得て作成をすることは、海事代理士の業務の範囲を超えるものとなるとともに、行政書士法に抵触するおそれがある」

 

(総務省回答の要旨)

「小型船舶登録法に関する書類の作成は、行政書士法上の官公署へ提出する書類等に該当する。したがって、これを他人の依頼により報酬を得て業とすることは、海事代理士の独占業務とされていない限り、行政書士法に違反する」

 

 

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